奈良県立医科大学_開学80周年及び畝傍山キャンパスオープン記念
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大学の組織化学教室のメンバー(2025.1.29撮影)畝傍山キャンパスで引越しの合間にHPhttps://chem.naramed-u.ac.jpこの10年間に山田孫平、久禮智子、奥田千愛(麻酔)、鶴田啓亮(救急)の4名の博士(医学)を誕生させた。海外からKarin KettisenとSemhar Ghilmaiの2名(Sweden)が大学院特別研究留学生として、またAtitaya Sookkasem(Thailand)が客員研究員として滞在し成果を上げた。山本が進める耐性菌ラクタマーゼの結晶構造解析の研究は、分子進化プロセス解明にまで到達し注目されている。松平が進めるHb-PEG超分子ポリマーゲルは、四次構造をもつHbを分岐点とし、刺激応答性の独特なレオロジーを示し、医療への応用が期待される。このように、医用?生体高分子、人工赤血球、ヘモグロビン、リポソーム、超分子ゲル、ラクタマーゼなどをキーワードとし、化学を基礎に医学?医療に貢献することを目指す研究の方針は、当教室開設当時(1958年)から今に引き継がれ、2025年4月からは畝傍山キャンパスに場所を移し、心機一転取り組む所存である。の生活環を研究室環境で動かすことに成功し、マミズクラゲの分類と生息状況に関しても多くの知見を得た。 この10年間には、コロナ禍という大きな災いを経験し、講義だけではなく、学生実習も半分は遠隔になるという、それまでは考えることもできなかった状況に置かれた。しかし、ネット環境の整備が進み、会議なども遠隔で行うことが可能となり、得られるものもあったと信じたい。 この原稿の締め切りが丁度、教養教育部門で先陣を切った生物学教室の畝傍山キャンパスへの移転と重なり、写真は引越し荷物搬入の最終日にリサーチクラークシップの学生と共に撮影したものである。新校舎は広大で綺麗な建物で、これまでとは異なった大学生活を予感している。永渕は残り3年余りの任期で、これまでの研究成果を発表していくことに全力を傾けている。次の周年には、新たな生物学教室が生まれ育っていることを期待したい。20化学教室の現状 化学教室は現在、酒井宏水(教授)、山本惠三(准教授)、松平崇(講師)のほか、非常勤講師として久禮智子、山田孫平、菅原啓祐と、教室職員の小林直子が、教室運営、教育、研究にあたっている。酒井が進めている人工赤血球(HbV)の研究開発では、2015年度から日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究?治験推進研究事業として、治験実施の準備を行なった。2018年度からはAMED革新的医療シーズ実用化研究事業として、奈良医大CPCにて治験薬の製造、北大で健常男性を対象としたPhase 1試験が実施された(Blood Adv 2022)。次相に向け2021年度からAMED橋渡し研究シーズB、次いでシーズCとして採択され、附属病院の先生方のご支援を受け2025年度にはPhase 1bを実施する予定である。HbVは酸素運搬機能のみならず、一酸化炭素キャリアとして抗炎症作用や、シアン化物中毒などに対する解毒作用も明らかにされ、様々な用途が想定される。HbVの研究テーマで 生物学教室は70周年の時と同様に、教授?永渕昭良、講師?小林千余子、助教?裏山悟司という3名の専任教員が、技官と秘書と共に教育?研究活動を続けている。教育?研究には他に、非常勤講師として荒木正介先生、後藤弘爾先生、秋山(小田)康子先生、特別研究員として角谷正朝さんの協力を仰いでいる。 教育では、この10年間で学生実習に大きな変化があった。これまでの脊椎動物5類について行っていた動物解剖実習が、時代の流れの中で、分子生物学を学ぶためのDNA塩基配列解析実習に衣替えをした。研究では、非上皮細胞における新規の接着構造(非上皮AJ)という、これまでにない概念を打ち立てられる研究結果を生み出すことができ、カドヘリン?カテニン細胞間接着複合体の新たな機能が見えてきた。これには、大学院生がCRISPRシステムの導入に成功し、その後、リサーチクラークシップの学生がこのシステムを用いて、いくつかの遺伝子破壊に成功したことが大きく寄与している。一方、マミズクラゲ教養教育 化学教授/酒井 宏水教養教育 生物学教授/永渕 昭良

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